身体拘束(抑制)とは?
身体拘束とは治療に影響のを及ぼす行動を抑制するものです。
小児では
- 点滴の針を抜いてしまう
- 経鼻胃管を抜いてしまう
- 気管切開カニューレを抜いてしまう
- 創部を触ってしまう
- 安静保持ができない
などの場合に身体拘束を行います。
これらの行動は治療に影響を及ぼし、状態が悪化したり、退院が伸びたりする可能性があります。
どんな種類があるの?
身体拘束は用途や部位によって行う拘束が異なります。
ミトン
手指の制限を行うものです。メガホン型のものもあります。
ものをつまんだり、つかんだりできないように、手のひら側は固い素材でできています。
抑制帯の中でも動きの制限が少ない抑制帯です。
肘固定(肘関節抑制)
肘を曲げられないようにする抑制帯です。
ほとんどの自己抜去は肘を曲げて、つかんで抜くため、肘を固定すれば自己抜去を防ぐことができます。
ミトンに比べ動きの制限はありますが、手指を使えるので「お気に入りのおもちゃをにぎれる」「手を握ることができる」といったメリットがあります。
ベルト
床上安静(ベッドから起き上がっていけない)の指示の場合に使用します。
上下肢、または体幹に装着し、ベッドやストレッチャーにくくります。
比較的強めの抑制方法であり、見た目も抑制感が強く、不安な気持ちになる方もいるでしょう。
身体拘束と看護のポイント
身体拘束を行うにあたり、患者さんにどのような看護を行っていくかについてご紹介します。
同意書はマスト
身体拘束を開始する前に、必ず同意書を取得します。
同意書には
- 身体拘束を行う部位、期間
- 身体拘束を行う理由
- 身体拘束を行うことでのリスク
などが記載されています。
不明点や不安な点は署名前に確認しましょう。
一番怖いのは皮膚トラブル
身体拘束を行う上でのリスクとして一番に挙がるものが皮膚トラブルです。
抑制帯による締め付けやこすれ(摩擦)、同一部位圧迫による褥瘡(床ずれ)、抑制帯の過湿潤による皮膚状態の悪化などが生じる可能性があります。
また抑制帯で覆われている部分は、抑制帯を外さない限り中の皮膚がどんな状態かをみることができません。「皮膚トラブル発見時にはかなり悪化していた…」ということにならないように、こまめな観察が必要になります。
抑制するのはかわいそう?
小児科で勤務していたとき、
「抑制をすると動けなくてかわいそう」
「抑制されている姿をみるのがツライ」
といった保護者の方の声を耳にしていました。
抑制をすれば自己抜去を必ず防げるわけではありません。抑制は完ぺきな手段ではないのです。
ですが、抑制をしないことによるリスクの方が大きいからこそ、わたしたち医療従事者は『抑制(身体拘束)』を選択します。
抑制は決して子どもたちを苦しめるだけのものではありません。スムーズな治療、予定通りの退院をサポートしてくれるもの、と捉えてみてください。
わたしたち医療従事者は、できるだけ抑制をしない、抑制時間を短くするために日々話し合ったり工夫をしたりしています。
小児の身体抑制は、もっとクローズアップされてもいい分野であると個人的に考えています。
いつか、もっと子どもにとっても保護者にとっても安楽な身体抑制の方法や抑制帯を考え、還元していきたいです。