アレルギー児のお守りであるエピペン
保育所等の施設では看護師による職員への指導が求められることもあります。
食物アレルギーとエピペン
アレルギーとは
アレルギーとは異物に対する過剰な防衛反応のこと。
この防衛反応は本来は体を守るために働くシステムですが、過剰に反応すると最悪命に関わる重大な症状を引き起こす恐れがあります。
食物アレルギーは、食物に対してこのような過剰な防衛反応が起こることをいいます。
アレルギー症状とは
- 意識がない
- ぐったりしている
- 脈が触れにくい
- 唇や爪が青白い
- 腹痛
- 吐き気、嘔吐
- 下痢
- 声がかすれる
- 咳
- くしゃみ
- 鼻水
- 息がしにくい
- ぜーぜー、ひゅーひゅー
- かゆみ
- 蕁麻疹
- 赤くなる
- 腫れる
アナフィラキシー症状は、これらのアレルギー症状が複数の臓器に出現し、症状が急速に進行している状態をいいます。
エピペンとは
エピペンは、アドレナリン自己注射製剤です。
使用することでアナフィラキシーのすべての症状を緩和させることができます。
副作用は思いっきり走った後のドキドキを感じるくらいで、安全な薬といわれています。
即効性がありますが、効果の持続時間は短いです。
エピペンは薬剤が含まれていますが、緊急時にエピペンを子ども本人に代わって使用することは医師法第17条(医師以外が医業をしてはならない)違反にはなりません。
ただし、ガイドラインに即したエピペン使用、使用後の救急搬送は必要になります。
(保育所におけるアレルギー対応ガイドライン 2019年改訂版より)
保育所における食物アレルギーのある子どもの状況
食物アレルギーと保育所に関してこのようなデータがあります。
- 食物アレルギーがある子どもの受け入れを行っている施設は約8割
- 1施設での食物アレルギー児数の平均は3.6人
- 保育中に新規で食物アレルギーを発症した子どもは、0歳児で0.68%、全体では0.14%
- 保育中に子どもがアナフィラキシーショックを起こしたことのある施設は4.5%
「保育所入所児童のアレルギー疾患罹患状況と保育所におけるアレルギー対策に関する実態調査 調査報告書」(平成28年3月 東京慈恵会医科大学病院)より
このように、ほとんどの保育所では食物アレルギー児を受け入れており、アナフィラキシーショックを経験した施設の割合も少なくありません。
また、エピペンと保育所に関してもこのようなデータがあります。
- エピペンを預かっている保育所は約1割
- エピペンを自らの判断で使うことができると答えた職員は約3割
「保育所入所児童のアレルギー疾患罹患状況と保育所におけるアレルギー対策に関する実態調査 調査報告書」(平成28年3月 東京慈恵会医科大学病院)より
データからエピペンに対して苦手意識をもっている職員が多いことがわかります。
よって、施設の保健衛生担当者には正しいエピペンの使用方法の指導が求められています。
エピペンの使い方
1.安全キャップを外す
2.太ももの外側にカチッと音がするまでオレンジ色の部分を当て、5つ数える(衣類の上からでも可)
3.エピペンを太ももから離し、オレンジ色のニードルカバーが伸びているか確認する(伸びていない場合は2に戻る)
4.打った場所を10秒間マッサージする
- 処方された本人だけが使用できる
- 1本のエピペンで1回しか使用できない
- 処方された本人だけ使用できる
- 注射時に投与部位が動くと注射部位を損傷したり、針が曲がって抜けなくなったりするおそれがあるので、投与部位をしっかり押さえる
エピペンの使い方を指導する
保育所等などの施設におけるエピペン指導のポイントをご紹介します。
エピペンは怖くない
エピペンは薬剤が入っているため、使用に戸惑いや恐怖を感じる職員もいるでしょう。
しかし、エピペンは副作用が少ない安全な薬剤です。
抗アレルギー薬を飲んだ後にエピペンを使用しても問題ないとされています。
適切な時期にすぐにエピペンを使用できるように、エピペンに対する考え方を職員で共有してみましょう。
エピペンの管理方法を共有する
エピペンは携帯用ケースにいれて15~30℃の場所で保管します。子どもの手が届かず、高温下や冷所を避け、取り出しやすい場所を保管場所に選びましょう。
保管場所は全職員が把握し、誰でも、どんな時でも持ち出せるようにしましょう。
ノンテクニカルスキルを取得する
食物アレルギーの知識やエピペンの使用方法を「テクニカルスキル」
状況判断と連携を「ノンテクニカルスキル」とします。
ノンテクニカルスキル取得には、職員同士の連携が必要不可欠です。
症状の見極め方、助けの呼び方、エピペン使用時の介助方法、他の園児の対応、わからないことがあった場合の声かけなど、シミュレーションを行いながら問題点の把握や、検討をしていきましょう。
思い込みや油断は禁物
「この前軽い症状だったから今回も大丈夫だろう」
「皮膚症状だけだからしばらくしたら落ち着くだろう」
過去の経験からこういった判断をするのは危険です。
症状のパターンは人によって異なり、さらに同じ人であっても症状がいつも同じとは限りません。
アレルギー症状を疑ったら繰り返し症状を観察することが大切です。
お役立ち情報
エピペン使用手順の動画や、緊急時対応マニュアルなどが掲載されているので、指導の参考になるかと思います。
特に、東京都アレルギー情報navi.の症状チェックシートは緊急時にすぐにみれるように各クラスで掲示してもよいでしょう。
栗原和幸先生のアレルギーに関する本もおすすめです。
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